東洋医学の世界では毛髪を「血余(けつよ)=血の余り」と呼ぶのはよく知られています。漢方医学の聖典とされる「本草綱目」(李時珍,1590年)や「本草備要」(汪昂,1682年)によれば「髪は血の余り。腎は精の処で、髪は腎の華」といった記述があるそうです。
漢方の世界では、「血」といっても、あの赤い血液を指すというよりも血やホルモンなどの内分泌系も含めた「体液全般」を指し、同じく「腎」といっても内臓器官としての「腎臓」を意味するだけでなく、泌尿器、生殖器までも含め「腎=精(生命力)を司る装置」としての概念という意味合いも含まれます。
こうした漢方医学の考え方によれば、腎臓を中心とした「生命力製造維持装置」が弱ることを腎虚(じんきょ)といいますが、白髪は腎虚により体液が十分に作られない、行き届いていないせいだとみることもできるのだそうです。
腎を元気にして白髪を予防
腎が弱れば、髪にまで血が行き届かない。だから髪が白くなったり、髪が抜けたりするー。
逆に白髪や抜け毛を防いでいくには、腎の強化が不可欠ということでもあり、考え方は非常に明快で説得力もあります。
体の外側から手を加えていく西洋医学に対し、東洋医学は体の内側から治していくのが基本とも言われますが、では東洋医学的に腎を元気にするにはどういう方法を取ればよいのでしょうか?
腎強化10カ条
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- 十分な睡眠をとる
なるべく、成長ホルモンが分泌される午後10時~午前2時に熟睡できるライフサイクルを心掛けましょう。
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- 適度に運動する
じんわりと汗をかく程度の有酸素運動を。筋肉痛になるような運動は逆効果になる場合も。
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- ストレッチ運動
足を伸ばして座る長座の姿勢から無理のない範囲で前屈がとりあえず簡単ですよ。
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- 適度な休息も大切
疲れたと思ったら、ちょっとだけ休む。ナップもおすすめ。うつ伏せになると腎臓への圧迫が軽減されるのだとか。
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- 塩分は少なめに
塩分の取りすぎは血液の濾過装置である腎臓に負担になるので、レモンや酢などで代用も考える
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- 体を冷やさない
体を冷やして良いことはほとんどありません。エアコンや冷たい飲み物には要注意です。
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- 黒い食べ物を食べる
ごまや海草、黒豆など。根菜や松の実、クルミなども腎強化になります。もちろん食べ過ぎはNG
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- ツボを押す
足の裏にある湧泉(ゆうせん)のツボを押す。湧泉は土踏まずの上方、足指を足底側に曲げると現れる「人」の字の交点部。
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- 耳たぶ揉み
漢方では耳を体に見立てる考え方があり、耳を揉むことでツボを刺激する。
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- 腎臓に手を当てる
背中の肩甲骨の下から腰の上あたりをあたためる。
生命力を損なっているから白髪が生えるという見方
東洋医学の見方をすれば、白髪は体のどこかに無理を生じさせ、生命力を損なっている証拠、ということになります。(もちろん遺伝的な要素や病気治療などによる白髪の場合もありますので、すべてがそうだとは言い切れませんし、個人差も大きいですが)
現在のライフスタイルが白髪を大量生産してしまう仕組みなのであれば、どこかでライフスタイルを見直さなくては白髪を食い止めることは不可能です。
ツボ押しやストレッチは今日からできますので、まずは白髪改善への一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか?